目の付けどころが「あさって」な日本の家電メーカー

4K対応の84V型液晶テレビ「BRAVIA KD-84X9000」

テレビが売れない。各テレビメーカーは過去最高の赤字で苦しんでいる。

昨年3月のエコポイントの廃止、7月24日の地上アナログ放送停波によりデジタル放送に完全に切り替わってしまった時点で、新しいテレビが欲しい人はほぼ買い換えてしまった。

もしくはケーブルテレビ経由であれば、2015年3月までデジアナ変換で従来のアナログテレビをそのまま使うことができる。

昨年あたりは3Dテレビが話題だったが、現在3D機能を使っている人はどれくらいいるのだろう?
家族全員であの邪魔なメガネを付けてみることは現実的でないし、3Dは一過性のブームで映像業界もすっかり3D熱が冷めてしまったようだ。

家電メーカーが次に期待して作っている物が、フルハイビジョンの4倍精密な4Kテレビ。
現在のフルハイビジョンの207万画素から829万画素と綺麗になっている。

例えば、SONYが11月に発売する4K対応液晶テレビ〈ブラビア〉『KD-84X9000』は168万円もする。
庶民が買えるような値段ではない。
しかも、その高解像度の液晶パネルの性能を発揮する再生機器やメディアも無い。
全くの無駄である。

SONYショールームのコンパニオンのお姉さんが一生懸命画面の美しさを説明するが、動きのある動画になると残像が酷く、文字などがカクカク動いて初期の液晶テレビレベルのクオリティになってしまう。

確かに静止画は綺麗だ。
だが、デジタルカメラで撮った画像を大きなテレビで見る人が何人いるのだろう?
普通のフルハイビジョンテレビとの違いがわかって、価値を感じて、大枚をはたいてテレビを買う人が何人いるのだろう?

コンパニオンは「ご自宅のリビングでこのように吸い込まれるような綺麗な画像がご覧頂けます」
と説明するが、
コンパニオンに「あなたなら、このテレビでデジカメの写真を見たいですか?」
と聞くと
「正直、見ないですね」
と。
なかなか正直でよろしい。

問題は、
・このテレビを見る人もいない
・見る映像や番組もない
・84インチもの大きな液晶パネルを作るのも無駄で、とてもメーカーが利益をあげられるとは思えない
ことだ。

映画をみたいのなら、4K対応のプロジェクターを買ったほうが安くて綺麗だ。
低俗なバラエティ番組やニュースをこんな綺麗なテレビで見ても仕方ない。

パナソニックは、6月に空気清浄機付き、微粒子イオン「ナノイー」発生装置を搭載した液晶テレビを発売した。

まさに「目のつけどころがあさって」である。
このままでは、台湾や韓国のメーカーに押されて、日本の家電メーカーは消えてしまうかもしれない。

次回の記事では、家電メーカーの迷走具合をさらに掘り起こしてみたいと思う。

ジョルダンニュースにも掲載されています。